【ウディコン】第10回レビュー#1~60【全レビュー】

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ウディタによるゲームの祭典、ウディコンもとうとう節目の10周年。このお祭り騒ぎに集結した傑作フリーゲームをエントリー番号順にプレイ&ご紹介してまいります。

どれを遊ぼうかお悩みの方や、プレイした作品の感想を共有したい方に楽しんでいただける記事になれば幸いです。

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【ウディコン】第1回から第9回を振り返る

 

<更新8/11>エントリー番号【60】まで掲載!

ジャンプ【>10】【>20】【>30】【>40】【>50】【>60】

目次

【1】『AN EARTH2 ~3つの地球と未来ドロボウ~』

作者 : スパイ03 さん
プレイ時間 :10時間(本編5分)

みどころポイント「斬新さ」
2作目でも変わらぬ奇天烈さ、悪童系RPG

第9回ウディコンで総合7位に輝いた『AN EARTH』の続編です。グラフィック的なトーンはあの名作『MOTHER』の隠れもないリスペクトの反面、挑戦的なタイトル画面がすべてを物語るギャグとパロディの奔流です。言うなれば話のわかるムーンサイド

RPGとしての作りこみも誠実なだけにギャップ好感度も高いニクらしいやつですが、この続編になると物語やグラフィックのスケールアップはさることながら、「キック」(スライディング)を実装が目玉。障害物を蹴散らしながらのダッシュ移動は爽快であり、また一般人にケンカを売ることすら可能。とんでもないシナリオ性とシステム性の融和が果たされてしまいました。

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【2】『とめさんのお宿にて~ほのぼの日常編~』

作者 : とめさんのお宿プロジェクト さん
プレイ時間 :15~30分

みどころポイント「物語性」
ごった煮オールジャンルなメスケモ特化ノベルゲーム

ウディタといえばケモなのです。その表れか、今回のウディコンは特にケモ度が高いですね。本作はウディコン第6回総合1位『RainyTower』の標準誤差StRさん主導のコラボ作品となり、魅力的な4人のメスケモがお宿に集い織りなす物語です。

高いユーザビリティのノベルゲームシステムとショッキングな冒頭は、さながら推理モノ。かと思えば独特の戦闘システムが開陳されてと、30分のプレイ時間の間に目まぐるしく展開は転がります。ともすればチグハグになりそうなノリをつなぎとめるのは蠱惑的なメスケモたち。メスケモはすべてを包み込むのです。

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【3】『ケモノ勇者がケモノ魔王の手下にお仕置きされる話』

作者 : ケモプレ制作委員会 さん
プレイ時間 :1時間~2時間

みどころポイント「その他加点」
カオスなケモノDRPGのオリジナル戦闘システムの意味深ゲー

『とめさんのお宿にて』と並んでエントリーしたのは偶然か必然か。本作は高純度のケモノです。獣度100%とか120%のキャラクターたちによる、なんとも意味深な物語。魔王に挑む勇者という強固な定番を、ここまで意識させない意味深テキストは達意の域と言えます。

マップは『ウィザードリィ』を思わせるDRPG調の3D。クラシックではあるものの、その意味深ケモの世界観が奇妙なムードを醸成しています。いざ戦闘となれば、オーソドックスなコマンド選択のバトルにカードゲームのフェイズ概念を導入した独特の感触です。とにかく何にも似ていない妖しい個性が光ります。

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【4】『メタルメサイア -鋼の救世主-』

作者 : くろくま さん
プレイ時間 :2時間程度

みどころポイント「遊びやすさ」
あなたはエンジニア、だから最強メカを目指すのだ

世紀末のにおいのする世界観で、プレイヤーのあなたは如月重工に就職します。自律ロボ「メック」のエンジニアとなったからには、当然、その装備やAI(行動方針)を思うままにエディットし、最強のメックを目指すのです。それ以上の説明は要りません。浪漫とはそういうものです。

ゲームの進行は編成とミッション受注を繰り返すいわゆる「クエスト形式」。ミッション中は通常のRPGの操作感ですが、戦闘はメックによるオートバトルのため、エディットが本作のキモ。買い物&装備編成なわけですが、グラフィックが細かく設定されたメカパーツの換装というフレーバーがたまりません。浪漫とは砂と錆と鉄と油から成るのです。

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【5】『カヤミセツナ』

作者 : 今門 楽々 さん
プレイ時間 :10~20時間程度

みどころポイント「熱中度」
ファンタジックなコンパクト牧場経営シミュレーション

放浪中のあなたは、ふしぎな猫を追いかけ道に迷います。そこに親切なドワーフが現れ、荒れ果てた牧場で生活することに。やわらかな美麗グラフィックがぐっとゲーム内へプレイヤーを誘い、雑草と石くれだらけの荒れ地へ放り出します。『牧場物語』や『マインクラフト』好きにはこれがご褒美。いざ、夢の整地三昧の日々へ!

以上がガチ勢さん向けのご説明。この作品、ゆるゲーマーな方にとっては箱庭系の日常ゲームとして楽しめます。主人公は男女で性別を選ぶことができ、町に繰り出せば魅力的なキャラクターたちがあなたを出迎えます。野宿のダークエルフのお姉さんとか。「ひと月が20日、1年が3ヶ月」という設定はプレイのテンポアップにも一役買って、どっぷりゲーム世界にのめりこめる「ひたれる」作品です。

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【6】『夢遊猫ハローワールド』

作者 : 明野 さん
プレイ時間 :5~10時間

みどころポイント「画像/音声」
今年も登場「夢遊猫」シリーズ、ケモショタスペクタクル

ウディタといえばケモ。そしてウディタのケモと言えば、この方、明野さんですね。ウディコン第1回から「夢遊猫」シリーズを投稿しておられる超常連さん。ゲームシステムやキャラグラフィックの技術向上ばかりか、その作風の先鋭化からも目が離せません。今回は海洋モチーフのあるケモとなり、涼やかですね。

ゲームとしてはオーソドックスなRPGに見えて、一工夫したフロントビューバトル。横ラインの「位置」概念が射程に関わるため、移動コマンドを駆使して攻撃や回避に立ちまわるパズル要素が盛り込まれています。最初のボスからこのシステムをきっちり使いこなしてくるため、歯応えあるバトルや物語をお求めの方におすすめです。

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【7】『クリッターズ』

作者 : Nojiyu さん
プレイ時間 :1時間~

みどころポイント「その他加点」
ファミコン“ライク”ではなまぬるい、真のファミコンリスペクト

世にファミコンライクのぴこぴこゲーは数あれど、本作ほどのファミコン感の再現にこだわったゲームがあったでしょうか。スクショでは伝わらない部分が、とにかくすごいのです。画面全体にうっすら入った横ラインがブラウン管のにじみを思わせ、町を歩けばキャラ画像がブレ、マップを切り替えればキャラと地形の描画がラグる「あの感じ」までがファミコンそのまま。一方、戦闘システムはオリジナルで、懐かしくも新しいゲーム体験の誕生です。

ファミコン当時のローテクを、現代の技術で再現してしまうなら、これはもう一級の演出です。「それにしたってなにをどうしたらコレができるんだろう」と思ったら、まさかのオープンソース配布です。ウディタ作者、必見!

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【8】『きみのかんじょーいれないで』

作者 : みやの さん
プレイ時間 :5分

みどころポイント「画像/音声」
たぶんきっとビジュアルノベル

語ってしまうのがもったない作品です。

ほんわかやさしいイラストをふんだんに散りばめ、台詞なしにプレイヤーさんが作品のメッセージをなんとなく感じとる。そんなゲーム。

オートセーブを駆使して、一度しかないゲーム体験を作り上げています。繰り返し遊べるのもゲーム性ですが、一度しか遊べないゲームというのも、いいものですね。

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【9】『ウシのチキンレース』

作者 : ギルバート宮村 さん
プレイ時間 :1分

 

みどころポイント「熱中度」
来ました、清々しいまでの一発ネタ

「なんでウシ?」とタイトルでオチて、DLしてみたら「ウシ用」のリードミーでオチて、本編でオチて、チキンレースなのでウシがひたすらガケからオチるかオチないかのゲームとなります。なんだこれは……。

ワンプレイはほぼ一瞬。わからないまま、わかる瞬間を求めて、ついつい右手の限界まで十字キーをがちゃがちゃやってしまうこと請け合い。一瞬の切れ味に特化した怪作です。

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【10】『未完のエリザ』

作者 : ナイデン内田 さん
プレイ時間 :2時間~4時間

みどころポイント「物語性」
今年は“こっち”か、ナイデン節

ウディコン第6回からホラーアドベンチャーなどを投稿されているナイデン内田さん。第7回、第8回と猛烈なゴリラネタのプッシュののち、第9回ではきれいなナイデンさんに戻られて総合6位にランクインされました。今年の第10回では“どっち”で来るかと、その動静が注目されておりました(著者の中で)。

ということで今回はピアノ・楽譜をモチーフとしたファンタジックなアドベンチャー。商業ゲームもかくやという卓抜な演出力はぐっと見るものを引き込むことでしょう。時に陶然とさせ、時に恐怖させ、時にゴリラの話をさしはさむ。これこそナイデン節。

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【11】『コトダマッスル』

作者 : ダブリス竈 さん
プレイ時間 :30分~1.5時間程度 さん
みどころポイント「熱中度」
総合力と書いてマッスルと読む、圧倒的な完成度
ウサギニア国とイヌトピア国の争いに巻き込まれた少女の運命を、ケモノのフレーバーに乗せて描ききる意欲作です。豊富なグラフィック演出と濃ゆいキャラクターたちによるノベルゲームなパートだけでスゴいのに、なんと本作はタイピングゲームです。
主人公は言葉の力を操る「言紡師(げんぼうし)」。しかし、相棒たるコトダマとして呼び出したるはむくつけきマッチョなナイスガイだったのです。ゆえにコトダマッスル。ゆえに言葉の力とはタイピングゲームであり、肉と汗の弾けるバトルとなります。ホームポジションに構えた独特のキー操作を要するものの、きっとあなたのタイピング筋を鍛え上げてくれるでしょう。

【12】『魔女の塔』

作者 : 二代目天ぷらマン さん
プレイ時間 :20分前後
みどころポイント「その他加点」
文字と数字を読み解き、記号に意味を見出そう
ゲームとは冒険やスポーツを抽象化し、パラメーターやテキストといった記号で再現したものです。見方を変えると、記号に意味を与えたり見出したりできたなら、それはもうゲームです。記号に意味を込め、感じさせる。そのテクニックにおいて、本作は突出しています。
謎めいた女性との「実験」として薬などのアイコンを操作する。するとなんらかの数値が動く。繰り返すつど、少しずつ、少しずつ、震えるほどに大きな「意味」が見えてくることでしょう。

【13】『じじまごRPGmini』

作者 : 鏡読み さん
プレイ時間 :1~2時間
みどころポイント「画像/音声」
頭をぽんぽんするあったかRPG
『クリッターズ』が迫真のファミコンライクならば、こちらは渾身のGB(ゲームボーイ)ライク。
そうそう、ずしりと重たかったころのGBはこんなふうに緑がかった画面で、表示切替でビロビロすることもあったような…
そしてレトロ志向を言い訳にしないドット表現のこだわりよう。GBライクの緑に合わせたやさしい台詞回しやBGM、森の探索と言った諸設定が渾然一体となった良作です。町や森の舞台がさっと広がるアニメーションも美しい。それにつけても生き生き動くじじまごのかわいいこと。

【14】『ポケットタッキュウ』

作者 : ユメソバ さん
プレイ時間 :30分~1時間
みどころポイント「斬新さ」
パワプロ×カードバトル×タッキュウ!
コンセプトはわかりやすいのに、実際のプレイ感はやってみるまで想像もつきません。DLからワクワクできる独創性です。ゲーム全体の作りはむしろソシャゲにも似ていて、『遊戯王デュエルリンクス』などが好きな方に良いのかも。
目玉にして骨子の「卓球のカードゲーム化」は、意外なまでのシンプルさと奥深さ。打ち出す球(カード)の攻撃力を比べ合って得点を目指しましょう。ドライブやカットなどのテクニックが属性となっており、相性による駆け引きも生まれていますね。実際のルールを大胆にデフォルメする潔さが、卓球の持つテンポ感を気持ちよくゲーム化しています。

【15】『四角君の岩投げ』 ※エントリー停止

作者 : ヤパヤパ さん
プレイ時間 :10分前後
みどころポイント「その他加点」
よくある迷路系ミニゲームと思いきや
小さな迷路を次々解いてステージを進んでいく小品です。よくあるミニゲームではありますが、「射撃による岩消し」、「岩押しによる通路の開通や、落とし穴埋め」といった仕掛けが程よいスパイス。敵キャラやダメージ床がうまく緊張感を維持しています。
なんといってもレベルデザインが地味ながらも巧み。考えるまでもないようなプチ迷路をサクサク解くうち、いつの間にか、だんだんと難易度が上がっています。そうと気づくころには、ささいなミスでゲームオーバー。ムキになってリトライすればもうこのゲームの術中です。プレイヤー心理のくすぐり方がなんともお上手。
(7/29 ウディコンへのエントリーを停止し、yahooボックスでの公開とされたようです)

【16】『サラと不思議な魔法石』

作者 : 白玉餅 さん
プレイ時間 :3~4時間
みどころポイント「熱中度」
約束された熱中度
主人公の魔法使いサラがふしぎな世界に囚われ、物語は始まります。脱出のためには爆弾をかわしつつ壁を掘り進めねばならない――ということで、マインスイーパーのRPG化なのだから、おもしろいに決まっています。
爆弾の位置が都度変わることでローグライクな周回性も獲得し、爆弾探しのサポートアイテムを拾って駆使する作りはなつかしのRPGエディター「WWA」(WorldWideAdventure)をもほうふつとさせますね。フェティッシュあるドットキャラも愛らしい、今年のウディコンの筆頭時間泥棒と言えましょう。

【17】『革命の外敵要因』

作者 : スパロー さん
プレイ時間 :30分 x 4つの難易度(ストーリー別)
みどころポイント「物語性」
ブラウザゲームのような一大戦記
あなたは指揮官となり、はじめに選んだお好みの副官と共に戦火のなかを駆け抜けます。魅力的なキャラクターを従え、硬派なバックボーンを備えた壮大なシナリオのRTSを戦い抜くのです。
戦闘前の編成フェイズでキャラ配置をし、その後は移動指示は出せるもののキャラクターが半自動的に移動し、付近の敵と戦う様子を見守ることとなります。群像劇めいて多種多様のキャラが入り乱れ、そうする間に戦局もエスカレーションしていくでしょう。噛み応えのあるゲームとじっくり格闘したい方におすすめです。

 

【18】『IMON ~Other Worlds’ Story~』

作者 : IMON制作プロジェクト さん
プレイ時間 :1~4時間
みどころポイント「斬新さ」
異世界への門をして“異門”
IMONすなわち異門を作り上げることで異世界同士の往還を可能とする存在が異門職人であり、異界からの訪問者を歓待するのがおもてな師。異界は色にちなんで黒界や緑界と名付けられており、その世界(マップ)も同様です。ところが、あるとき謎の存在の襲撃を受け、活発な異界間の交流は閉ざされることに――
独特にして壮大な世界観からの導入で、本作はGame.exeを異門として、プレイヤーを作中世界へと巧みにいざなってしまいます。壮大なシナリオ設定とリンクしたゲームシステムは、マリオ系の横スクアクションを基調としながらもワープ能力を駆使した新規性が魅力です。この文脈を踏襲した自作戦闘もシンプルながらに手ごたえがあり、なにより強大な敵に立ち向かっている興奮がひとしおです。

【19】『ハイスandカルト』

作者 : アザー さん
プレイ時間 :1プレイ10分前後
みどころポイント「遊びやすさ」
終わりなき印象改善横シューティング
サキュバスのハイスとカルトは、魔族仲間に「エロいだけ」と侮られていることを知り、発奮。魔法でも戦えるんじゃ! と知らしめる印象改善のための大暴れを開始します。このシューティングゲームとしてのスコアは「どれだけ見返せたかポイント」でもあるため、あくなきハイスコア更新が本作のカナメとなるのです。
ハイスとカルトの自機キャラを交換しながらの横シューティングは徹底してユーザーフレンドリー。HPは自動回復するし、ステージにも明瞭な終わりは設定されていません。上達すればスコアを追及してずっと左から右へ進み続けられるのです。STG版片道勇者と言うと、わかりやすいかも。

【20】『穴があったから入ってみた』

作者 : あまなつ さん
プレイ時間 :10分~1時間ほど
みどころポイント「遊びやすさ」
安心して握ったコントローラーほど離しにくいものはありません
ウディタ作者なら誰しもお世話になったのではないでしょうか。わかりやすいウディタ講座「あまなつブログ」のあまなつさんですね。作歴も豊富で熟練のウディタ使いです。ブログも必見の記事量ですし、そのぶんゲームも安心してプレイできます。フリーゲームにおけるこの「安心感」はとても大きなアドですね。
ウディタ基本システムを大事にしつつ、しっかり遊びやすくて個性も打ち出す。これが意外と難しいのですが、さらりとやりのけた上に、自由度あるゲーム体験を提供してくる職人芸です。

【21】『My VitrioL』

作者 : spleen さん
プレイ時間 :2~3時間

みどころポイント「物語性」
純文学であり一大叙事詩でありRPG

作者のspleenさんは重厚にして上質なテキストを主軸に、そのテキストへ寄り添ったRPGづくりに定評がある方ですが、今回は一層鬼気迫るものがります。人と竜、暴君と英雄という二軸の相克の歴史があり、それらが重なる集約点としての運命を背負った「竜殺しの毒を持つ青年と、竜の血を引く王女」が物語の中心となるのです。市販の小説レベルの練られた舞台設定であるとすぐに了解できるでしょう。

しかもこの二軸の歴史というのは、過去作のテーマをも思わせます。第6回投稿の『tear garden』の「人間と人間がせめぎあうストーリー」第9回『血の穢れを乗り越えて・・・』の「人間とヴァンパイア(異類)を題材にしたストーリー」……つまり本作は、こうした過去作の蓄積が確かな結実となっているのでしょう。

 

【22】『灰色ノ油臭』

作者 : wnc develop さん
プレイ時間 :2~5時間

みどころポイント「その他加点」
これはもはや哲学だ

ウディタと思うと面食らう、そんな作品。キーボード練習RPGとの名乗り通り、徹頭徹尾タイピング能力が問われます。移動するにもスペースキーで方向転換、Fキーで前進といった具合。DOS窓(コマンドプロンプト)時代のゲームを思わせる操作感のまま、タイピング内容もハード。アルファベットや、時にプログラムコードといった英数字オンリーの入力が求められます。

移動にさえ戸惑うシステムではありますが、ディストピア系SFを思わせる謎めいて不自由な雰囲気にはむしろぴったりマッチ。ゲームの一歩一歩、タイプの一打一打。その重みを意識せざるを得ない考えさせる作品です。

 

【23】『もう二度と君に会えない』

作者 : モリ さん
プレイ時間 :15分

みどころポイント「物語性」
二重三重の没入型ホラーアドベンチャー

画像選びの難しい、どこを切り取ってもネタバレになりそうな高密度の短編です。
「このゲームは、ゲームの世界に閉じ込められたプレイヤーが、ヒロインと脱出をめざすホラーアドベンチャーです」との紹介文からわかる通りの、意欲作。複雑な導入になりそうなところを巧みな演出でぐっとプレイヤーを劇中へ引き込みます。開始1分で「うおっ」と声が出るでしょう。

おどろかし型のホラー描写は時に容赦なくゲームオーバーを叩きつけますが、オートセーブによってプレイのテンポは良好。閉じ込められたゲーム世界から脱出するため、プレイヤーはさらにその世界の「本」からある男の人生を追いかけることになります。劇中劇の構成を使いこなした良質な短編ホラー。

 

【24】『風雷嬢』

作者 : アマタ さん
プレイ時間 :10分

みどころポイント「画像/音声」
ふわふわエアリーなアクション&グラフィック

うら若き風神雷神の少女たちが、神さまとしての能力を試されることになり、その課題というのが人間のためになること。雷神のミライちゃんは電気療法の要領で人をキモチヨクする雷を落とし、風神のフウコちゃんの力で人間から発される感謝の心であるハートを集めます。風神雷神癒し系アクションなのですね。

規模としては、さっくり終わる短編ゲーム。それでもバッチリ満足感があるのは、凝ったキャラ描写のおかげ。なんと立ち絵がふわふわアニメーションしているのです。ゲームの結果でエンドが分岐しますが、目標が不達成なときでも「それはそれでアリ」と思えるやさしい結末なのも嬉しいポイント。アクション中もカットイン演出で魅せてくれます。

 

【25】『緋色の研究所』

作者 : くい さん
プレイ時間 :2時間半~4時間半

みどころポイント「遊びやすさ」
定番にして高水準の探索&脱出ホラー

追いかけっこアリのホラーアドベンチャー。同ジャンルの『もう二度と君に会えない』は明確な状況設定から始まるのに対し、本作は「謎の施設で目覚めた謎の少女が主人公」。手堅いセッティングであるとともに、シビアなリソース管理が特色。

アイテムの所持数には7枠の制限があり、資料(情報)や回復アイテム、食料のやりくりにゲーム性が付加されています。特に食料にかかわる「お腹」ステータスは移動や探索において最重要。一方、セーブがいつでも可能なことに始まり、チェックすべきポイント付近でポップする「!」や、マップ確認の機能を充実させたりで、親切設計でも高水準。

ボリュームもあって、実況・配信にもうっつてつけかも?

【26】『すっぽんクエスト』

作者 : えりやぬす さん
プレイ時間 :7時間~

みどころポイント「斬新さ」
タイトル部門のダークホース

作品名だけで勝利が決まる。そういうことがたまにあります。

ウディコン第10回でその境地にもっとも近いのが本作ではないでしょうか。この題名とは裏腹に、中身は端正なるポストアポカリプス。戦禍を逃れるためウイスキー蒸留所にて冷凍睡眠に運命をゆだねた資産家の息子シュンリ。彼が辿る数奇な運命が精緻なイラストとドット技法による映画もかくやという臨場感で語られていきます。光や陰影がとにかく美しい。

しかしシリアス一辺倒に偏らないサービス精神がネタの大盤振る舞いをせずにはいられないようで、このタイトルですら、本作が秘めるちからの片鱗に過ぎないのです。この美麗なタイトル画像でこの題字、何度見ても目をこすってしまいますね。

 

【27】『AnimalCurling』

作者 : カーリングゲーム創研 さん
プレイ時間 :2~3時間

みどころポイント「遊びやすさ」
“氷上のチェス”完全再現

2018年2月に行われた平昌オリンピックのカーリング競技女子において、日本代表「LS北見」が大健闘を見せ、大きな話題となりました。テレビの前で興奮した方も多かったはず。本作も、その感動をウディタ上で形にしたものです。簡単マウス操作ではあるものの、ストーリーモードで戦う動物たちは非常に手強い。飼育員と動物たちというほんわかさなのにカーリング勝負はガチガチにガチ。

それもつまり、カーリングの奥深さの表れです。石を円の近くに投げるだけ。しかしそこには複雑玄妙な駆け引きが潜むのですルール参照)。もどかしいからこその緊張感と好投の快感。あの日の感動を思い返したいアナタに。

 

【28】『PLAGUE HEAD2 ~明かされる真実~』

作者 : レイマスター さん
プレイ時間 :15~30分程度

みどころポイント「熱中度」
ハイテンポな短編ホラーアクション

前作にあたるのが、ウディフェス外伝およびふりーむに投稿されている超短編ホラーアクション『PLAGUE HEAD』。プレイ実況などでも人気の作品。超短編と銘打つだけあって、ウディフェス外伝の趣旨に合わせた1プレイは10分程度のホラーゲームでしたが、パワーアップした続編が今回のウディコンに参戦です。
前作を知らなくても問題のない作りですが、お手軽なアクションホラーですからどちらも合わせて楽しみたいところ。映画の「ジェイソン」シリーズのように、続きものでも犠牲者が毎回変わるのでどこからでも楽しめるイメージですね。同時に、作品を重ねるごとに怪人のディティールが深まっていくという。
はたしてPLAGUE HEADすなわちペストマスクの怪人の真実とは――

 

【29】『ウディタのサンプルgame特別バージョン』

作者 : からあげもりもり さん
プレイ時間 :1~2時間

みどころポイント「その他加点」
みどころは心意気

規約的にどうなんだろうという、なんとも悩ましい投稿物です。
なにしろウディタのサンプルゲームほぼそのまま。台詞の最後にウディタの10周年を祝す旨が追加された他、各所におかれたオウムが説明なくTwitter連動を求めてきます。変更点はそれぐらい(BGMも変わっていたりしていますが)。
かなりデリケートなことをしつつ、readmeなどのケアも無いとあってはユーザーさんを選ぶどころか遠ざけてしまうでしょう。しかし、ウディタとウディコンの大きな節目を祝いたいという思いは皆が同じくするところ。参加し、声を上げる心意気はご立派です。

 

【30】『魔法農場』

作者 : ハコノワ さん
プレイ時間 :1時間

みどころポイント「斬新さ」
呪文を唱えるドキドキ感にひたれます

前回ウディコンに『僕は旅商人』で参加されたハコノワさんですね。お店経営シミュレーションっぽいけれど一味違うオリジナリティが特徴でしたが、今回もそこは同じ。おおまかには農園経営シミュレーションでありながら、なんと本作は魔法使いが主人公で、しかも軽いタイピングゲーム。
呪文としてアルファベットを打ち込み、作物を植え、育て、収穫していきます。打ち込むのが意味ある文章ではないだけに、緊張感が損なわれません。打ちそこなうと軽いマイナス効果が出てしまいます。「魔法の呪文を唱える」ってこういうことなんだなあ! という感覚が、なんだか嬉しい。少しばかりタイピングに慣れてくると、機能拡張で魔法の効果範囲が広がったり、呪文を短くできたりとレベルデザインにも工夫があります。
荒れ地のようだったマップが華やかに変わっていくのも楽しいですね。

【31】『パズル問答』

作者 : むぞくせい さん
プレイ時間 :約1時間
みどころポイント「画像/音声」
帰ってきましたスタイリッシュなアドベンチャーパズル
前回ウディコンにて『謎解きホテルの30のトビラ』で独特の存在感をアピールしたむぞくせいさんの新作です。確かな技術によるシンプル画面はむしろオシャレ。なぞなぞやパズル集でありながら、『謎解きホテル』同様に問題を解き進むごとにフロアが上がっていく見せ方が物語性やモチベーションにも寄与します。
全体的なクオリティアップはさることながら、今度はストーリー性を増したお地蔵さんやお堂との「問答バトル」となっています。なぞなぞとは深く考えることであり、とりもなおさず精神修養。ゲームそのものにステータスはないけれど、謎を解くたび自分自身のレベルが上がったような達成感が実に嬉しい仕掛けです。

【32】『G』

作者 : アフロマンと緋蒼翠 さん
プレイ時間 :1~2時間
みどころポイント「斬新さ」
兄と妹と魔王の群馬県ファンタジー
さらわれた大事な人を救うべく、主人公は冒険に身を乗り出し、ついには魔王と対峙するまでに至ります。目的を果たすために王墓に分け入り、各地の強敵と対峙してとなんとも王道的な構成の短編RPG。
しかし、舞台がグンマーであり、ヒロインが妹です。そこが変わるだけで、こうも違って見えるのかというぐらい、強いシンボルなのがグンマーであり、妹です。Gといえばグンマー、グンマーといえばハニワなのでした。序盤の戦闘バランスはきつめで負けたら即ゲームオーバーです。セーブはこまめに。
タイトル画面には強く訴えかけるものがありますね。ハニワの圧。

【33】『レクイエム』

作者 : エムアイ さん
プレイ時間 :4時間~
みどころポイント「熱中度」
来歴を語るだけでもアツすぎる
前回コンテスト『死後の世界に触れた彼女は』のエムアイさんのSRPG最新作。つまり、ただでさえスゴかった前作のシステム的なパワーアップ版なのです前作がどうスゴかったかと言うと、召喚システムを駆使した独自性の高いSRPGを構築しただけではなく、表面の挙動でいえば、スパロボライクなゲームを作れるSRC(Simulation RPG Construction)をウディタ内で再現した作品でもあるのです。
たとえるならば「イラストコンテストにsaiっぽいツールを自作して、それですごい絵を描いて応募した」というような、二重の偉業を成し遂げた創作だったのです。そんな前作をさらにパワーアップさせたのだから、異次元レベルの広くて深い情熱・愛が実った作品なのです。しびれるシブさ。

【34】『Quiz world maze』

作者 : sora さん
プレイ時間 :5~10分
みどころポイント「熱中度」
スクロールしながらの、道が続くかどうかヒリつく「あの感じ」
全4面の広ーい迷路を踏破するだけのお手軽ミニゲームとなっています。1~3面まではそれぞれゴールに番人がいてクイズを出題しますが、選択式なので詰まることは無いでしょう。3面からはBGMがなくなります。静謐な雪景色をウロウロウロウロ……これはこれでムーディだ……
とにかくマップが広く運任せに進むしかないのですが、スクロールしていって「この道が続くかどうか、どこにつながっているのか」がギリギリ見えそうで見えない距離の調整には、こだわりがあったように感じます。

【35】『Friendly Island』

作者 : KAZUTO さん
プレイ時間 :約1時間
みどころポイント「物語性」
ふしぎな島に集ったふしぎな人たちの交流RPG
白黒の猫を連れたメイドさん、魔法使いの子弟やケーキ職人、魚釣りの得意な巫女さんといった面々が集まった秘密の島。そこでプレイヤーは商人ベリルとなって冒険やアイテム収集を楽しみます。
アイテムをキャラに渡すことで好感度が上昇し、いっしょに冒険することができ、イベントシーンなども発生します。とあるキャラが抱える問題が一応のメインストーリー、RPG要素となって進行しますが、その後は自由にキャラクターとの交流を楽しみましょう。モンスターグラフィックまで自作でかわしく、なんとも癒されるゲームです。パーティーメンバーが増えていくにぎやかさが、なんとも楽しい。

【36】『ハイエン』

作者 : めんたいこ2 さん
プレイ時間 :1時間
みどころポイント「物語性」
ハイエン=排煙/廃園/肺炎
操作感としては脱出ゲームに近いでしょうか。ふと、昔なじみの女の子のことを思い出した主人公は、彼女と再会すべく家を出ます。一見して穏やかな街並みの舞台は、至るところに奇妙なイベントが敷かれ、容赦なく我々をゲームオーバーへ突き落します。その勢い、バッドエンド集めが楽しくなるほど。
しかし、そのたびにこの世界のことがわかってくる。工場の排煙が引き起こす肺炎のために捨てられた区画こそがこの舞台であり、廃園なのです。そんな世界ではたして思い出の少女との再会は叶うのか。ディストピアSFやサナトリウム小説のいいとこどりなテイスト、おごそかでおそろしくもうつくしい。箱庭的にひたれる世界観が提示された作品なのです。

【37】『ディアボロスフォビア』

作者 : プレスト☆ROA さん
プレイ時間 :目安5時間
みどころポイント「熱中度」
メイラとココナの”デビルハント”の物語
なつかしくも新しく、名作ゲームへのリスペクトに溢れつつオリジナリティがある。矛盾が矛盾でなく、魅力に昇華されきった快作RPGです。公式のアピールポイントは、基本システムの戦闘をアレンジした「魔玉」システム。魔玉を装備することで使用可能なスキルが増え、戦略性を増すというものです。ベテランゲーマーならば『FF7』のマテリアを思い出すことでしょう。
では本作は『FF』リスペクトかというと、それだけではありません。タイトル画面ではSFCの『カービィ』を知っている人をニヤリとさせ、ゲーム内の操作説明でも昔懐かしの「説明書」のリスペクト。グラフィックやイベント演出はGBAの『マザー3』のオマージュで、戦闘終了後にキャラたちが話す姿は「テイルズ」シリーズを想起させるのです。そしてこれらが、パロディで終わることなく、本作『ディアボロスフォビア』という作品として自然に融和し合っています。これこそ誰もが作りたいと夢見る、<自分の「好き」をすべて詰め込んだ作品>を作り遂げた感動作です。

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【38】『100層洞窟』

作者 : サンフライ さん
プレイ時間 :3~4時間
みどころポイント「その他加点」
100フロアを作り切ったタフネスに喝采を
システム的には基本システム(サンプルゲーム)そのままですが、タイトル通り踏破すべきマップを100個用意しきっているのが特色です。戦闘バランスやイベント、ボスの配置には少々わかりにくい点が残り、結果的には初見殺しのオンパレード。
ファミコン世代ならば、理不尽にゲームオーバーを食らいながらも取っ組み合った経験があるものですが、筆者としましてはあのころの懐かしさが込み上げてまいります。もくもくとレベリングしたい方には長く遊べる一本。

【39】『わらわらすぴりっつ』

作者 : すぷりー さん
プレイ時間 :1時間くらい
みどころポイント「その他加点」
確立された精霊さんたちの世界観、そのやわらかな魅力
前回『ぽちぽちすぴりっつ』を投稿されたすぷりーさんですね。すぴりっつ」シリーズとでも呼ぶべき、一目でわかる「らしさ」が光ります。前作同様のシンプルなクリックゲームでありながら、ふしぎな熱中度は一層進化しています。
今回は精霊さんを集めることで、ステージ(土地)を華やかにし、さらに別の精霊さんと出会っていくコンセプト。精霊さんの特徴だったり、精霊さんどうしの関係だったりの諸設定がゲームシステムに落とし込まれていて、「精霊さんとのふれあい」そのものが愉快なゲームに昇華されています。

【40】『あなたは呪われてしまいました』

作者 : アトハ さん
プレイ時間 :5分~10分
みどころポイント「斬新さ」
あなたは“気づける”ひとですか?
ネタバレ厳禁のレビュー泣かせなアイディア作です。それだけに「まずはDLして、起動してみてほしい」と思うのです。本作をゲームとして扱えるかどうかに、ちょっとした分かれ道が仕掛けてあって、気づけたならば一気に夢中になることでしょう。
ちょっとだけ、ネタバレヒントを隠しておきますね。
ゲームが終了しても、諦めずに再起動を。Game.exeの周りにも変化が起きています。

【41】『エライザの食卓騎士』

作者 : 秋月ねこ柳 さん
プレイ時間 :2~7時間
みどころポイント「物語性」
戦うことと食べることを考えるRPG
お使いクエストを続けざまにこなしていく定番の進行ながら、これを「食卓騎士」と設定付けしたことに妙味があります。村の守り神たるエライザ様に美食を饗する使命を帯びた若者をして「食卓騎士」。村の歴史にまで踏み込んだ世界観が、ただのお使いを壮大な大目的に仕立てつつ、ポップでキャッチーな作風で楽しく遊べます。
説明パートをクイズ形式にしたり、移動ショートカットが充実したりでユーザビリティも高品質。戦闘も『ふしぎの城のヘレン』を思わせるWTシステム。うまく立ち回れた快感はかなりのもので、敵がバコーンと飛んでいく演出も愉快です。あなたもあなたも謎の生物「犬」を見届けましょう。

【42】『Wonder Pict Land =絵本の世界で=』

作者 : サカモトトマト さん他
プレイ時間 :1時間ほど
みどころポイント「物語性」
ポップでキャッチーバイオレンス
第9回ウディコン『不思議のMANGA』にて好評を博したサカモトトマトさんの新作です。前作は主人公ルピィが漫画の中に入ってしまい、コマ間の移動などがそのままゲーム性に落とし込まれたアイディアの光る意欲作でした今回もその方向性を組む続編として、「絵本」の世界のなかでやりこみ度の高いパズル要素のあるARPGを繰り広げるのです。簡単そうでいて、気力ゲージの存在など、案外と硬派なバランス感覚が好印象。
さらに自作度の向上した構成が、いっそう作者さん独特の世界観を広げています。ほんわか絵柄なだけにキコリさんの存在感もかなりのものです。「クレヨン」をキーアイテムにするなど、絵本らしいテイストを大事にしているからこそ、時折挿入される独特のコミカル演出がいっそう効果を上げています。とにもかくにもキコリさんの名演なんです。

【43】『物欲夢幻地獄』

作者 : syunta さん
プレイ時間 :5分~∞
みどころポイント「その他加点」
悟るまでは終われません
この作品はゲームの形をした精神修養です。お小遣いをもらい、旅をし、買い物をする。するとまた初めに戻って、使うあてもないアイテムをひたすら買い続けることができます。
まさしく人生の縮図。色即是空の空虚な憂き世ではかなき我欲にまみれ、どこへ辿り着くということもなく永劫に輪廻するのです。貧者に施しをするとクリアです。

【44】『ウルファールライヒの栄光』

作者 : 黒猫チルノ さん
プレイ時間 :12時間~20時間
みどころポイント「熱中度」
サンプルゲーム解釈への新たなる一頁
WOLF RPGエディターは、作者さんの遊び心でサンプルゲームにおけるウルファール、P・G・エディ、夕一という3キャラに分かたれました。彼らは長らく愛され続けてきましたが、ついに、その「三分割」に焦点をあてた一大戦記が現れました。
ウディタランドを分有する三国と、それを治めるウルファール、P・G・エディ、夕一ら為政者たち。ある事件をきっかけに鼎立のバランスは崩れ、ウディタランドはにわかに戦火へつき込まれるに至ります。重厚な筆致でつむぐその戦史にふさわしくゲームジャンルはヘックスタイプの戦略シミュレーション。拠点があり、ユニットがあり、緊張の敵思考時間があるのです。簡略化してこそいるものの深い考察・戦略を求める硬派な作品となっています。あと夕一かわいい。

【45】『そうだ脱出しよう』&【46】『出口を探そう!』

45 作者 : natsuo さん プレイ時間 :10分
46 作者 : yugo さん プレイ時間 :20分程度
みどころポイント「その他加点」
異例の連結レビューとなりますが、なにしろこの2つは大変よく似ています。
共に脱出、迷路系ジャンル。ゲームタイトルが「ウルファールのサンプルゲーム」のまま、タイトル画面などもなく密室や迷路に放り込まれたウルファールさんを操作するのです。装備やセーブも使用しないのですが、何のコマンドもないメニューらしきものを呼び出すことはできます。
どちらか遊ぶなら、両方合わせて見比べて遊びたい。そんな存在です。簡単そうでいて、意外な一ひねりが仕込まれています。いちどは「おっ」と声が漏れるはず。

【47】『狩る狩るガールTV』

作者 : Dot蜥蜴 さん
プレイ時間 :1~3時間
みどころポイント「熱中度」
時代を捕えた横スクアクション、狩る姉さん
25歳、ジャージ、ロリババア、元パチプロ。これが本作の主人公です。なんか儲かるらしいのでyoutuber的存在となってモンスターを倒します。濃。ウディコンに「キャラクター」評点があればダントツトップだったに違いありません。
ゲームとしてはマリオライクなジャンプを駆使した横スクACT。ジャンプには強いこだわりがあり、縦穴から壁蹴りで駆け上がったり急降下でのコイン(宝石)回収などがビシッとキマれば爽快なカッコよさ。ステージ攻略のスコアが動画再生数などの評価となりますが、動画配信であるからには魅せるプレイングをしたい、と思わせてくれる設定付けが、自然とモチベを高めてくれる。そしてそれがめちゃくちゃ燃えて気持ちいいのです。「キマったぜ……」とひとりごち。

【48】『フロースラントの魔法屋さん』

作者 : ud さん
プレイ時間 :3~4時間
みどころポイント「熱中度」
愛と吝嗇のリソース管理シミュレーション
錬金術師の見習い学生である主人公は、試験として3年間の魔法屋経営を行うことに。アイテムを錬金し、お金をためて素材や新たなレシピを獲得しながらも、錬金レベルを上げていきましょう。はやい話がアトリエライクなSLG。ですが、戦闘要素はなく、かわりに緊張感を保つのがシビアな資金繰り。さすが第6回にて総合3位のリソース管理一本道RPG『ロードライト・フェイス』をものしたudさんです。
うまくお金を管理するためには、冒険者たちの好感度を集め、その好感度を消費して「素材集め依頼の報酬を値切る」「アイテムを高く買ってもらう」テクニックが問われます。愛をお金に変えるのです。そしてこれは緊急回避ではなく、活用すべき正統なゲーム性。げにおそろしきは錬金術の宿業なのです。

【49】『パティシエになるのだ!』

作者 : ねち さん
プレイ時間 :30分程度
みどころポイント「画像/音声」
甘いケーキと辣腕ばあちゃん
上記『フロースラントの魔法屋さん』と並んで、ほんわか絵柄のシミュレーション作品です。こちらはパティシエを目指す女の子によるケーキ作りとなり、その意味では第7回の優勝作『キャンディリミット』をほうふつとさせます。
ショートケーキやロールケーキといったレシピを元に、ベース、サブ、トップ、タグのエディットが可能です。チョコベースのバナナサブにいちごトップならば、チョコ味のスポンジにバナナクリームを使っていちごを乗せる、という意味。これに合わせてきっちり画像も変わっていきます。さらにキーワードを添える「タグ付け」によって流行に合わせた売り出し方まで考えられるのです。資金繰りを間違えれば一発ゲームオーバーながら、オートセーブも充実。おとなしそうでも、この完成度はガチです。

【50】『レガシアの洞窟』

作者 : ぽんぺい さん
プレイ時間 :6時間以上
みどころポイント「その他加点」
ポンヌエクトを てにいれるまでは くにに かえれない。
「クロを きめてください。ギランで よろしいですか?」 冒頭からの完璧なツカミです。やられた。この一文で我々はなす術なくレガシアの洞窟にとらわれ、ポンヌエクトを求める冒険に旅立たずにはいられません。ポンヌエクトがなにかもわからぬままに。
readmeには書いてあります。クロとはクラスで、ギランとは戦士のこと。「いつものキャラメイク」に過ぎない手続きを少し変えただけでゲーム空間は一変し、ファミコンライクの簡素でオーソドックスなDRPGは、妄想をかきたてずにはいられない奇異なる象徴世界と映じます。なればこそ、ポンヌエクトの正体を確かめずにはいられなくなるのです。

【51】『ドラゴンナイト伝説』

作者 : 粉粉粉粉粉 さん
プレイ時間 :3分

みどころポイント「その他加点」
意外性という意味では随一ではないでしょうか

「アクションゲーム?的なものです」と作者さんコメントにあり、タイトル画像は勇壮なハイファンタジーを思わせます。なるほど任意の戦士を選んでドラゴンと切り結ぶアクションなのだなとゲームを起動すると美しい花畑をバックにボタンの目押しゲームが始まって終わります。いやーおどろいたなもー
ハイスコアは大きな桁数になるのが思いのほか嬉しく、結果のツイートシェアもできるようです。

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【52】『key&wolfarl』

作者 : tento さん
プレイ時間 :10分~30分

みどころポイント「その他加点」
「1つエターなれば凡人で、100万個エターなれば神だ」

定番の脱出ゲームです。密室からの脱出でありながら、本作は「ウディタ初心者からの脱出」でもあります。ウディコン応募直前、ウルファールさんにとらわれたウディタユーザーとなってあなたはウディタの密室から抜け出すのです。それはすなわち、ウディタユーザーのリアル。
当然に出題されるのはウディタ技術や知識にかかわる問題ばかり。このゲームをクリアするころには現実のウディタレベルもアップしていることでしょう。ウディタ初心者さんにおすすめなのはもちろん、中級者以上を自認するあなたも、初心にかえってみませんか?

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【53】『コルンの赤い真珠』

作者 : 学業院中学校科学部 さん
プレイ時間 :15分~20分

みどころポイント「物語性」
なつかしいレトロタッチのARPG

主人公の少女がおつかいに出かけた小冒険で、おもいがけない運命に出会うお話です。古代の王の秘宝がそこに絡んできて……という王道ながら、そこを歩き通せば確実に手堅くおもしろくなることを期待させる導入です。音楽で言えばカノン進行というやつですね。
シンプルなARPGながらも、剣や槍、弓、銃、魔法と多種多少の武器が選ぶことが出来、そのほかのアイテムも日用品などが豊富な意欲作です。ザコも一定回数倒すことでスキル習得、ダンジョンはランダム生成と大変にやり込みがいがあります。スケールに比してプレイ時間が短いのですが、今回は体験版的な位置づけとなっているようです。

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【54】『cave search』

作者 : ゆーた さん
プレイ時間 :10秒〜1分

みどころポイント「斬新さ」
意外な原石かもしれない

「プレイ時間10秒〜1分」、「制作1日」とのことで、さくっと終わるゲームと油断しておりました。実際その通りの超短編ではありますが意外なゲーム性を秘めています。これは、「脱出ゲーム」や「鬼ごっこゲーム」ではなく、洞窟をさまよう夕一を見つけ出して助けるゲームです。ダイエットに失敗した夕一は洞窟を歩くたび地面に穴をあけてしまい、やがては自らその穴に落下してしまう運命にあり、プレイヤーは彼を一刻も早く救い出さねばなりません。
追いかけっこではあるのですが新たな切り口となっています。難易度が三段階あるものの、初期配置で夕一とどれだけ離されるかの運によるところが大きく、制限時間など要素を足していけば大化けしていたかもしれません。

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【55】『メツァルナ』

作者 : フォジョリン さん
プレイ時間 :4~7時間+y

みどころポイント「画像/音声」
歴代屈指、圧倒的な「プロっぽさ」

マウス&キーボード操作の横スクロールアクションRPG……とのカテゴライズにおさまらない世界観、キャラ、ビジュアルのパワーが大爆発。ゲームとしても高度かつ独特なアイディアが満載です。導入直後は訝しむようなシステムはシナリオのおもしろさでカバーしてと、抜かりの無い総合力。
それもそのはず、前回ウディコンでも独自路線で注目を集めた12位『邪策の枷』の作者さんです。リズム&パズルによるバトルという離れ業をやってのけた方の次回作なのだから、それはもうアドレナリンどばどばのプレイ体験が約束されたも同然なのでした。第一声で心をつかむ、ぬるぬる動く立ち絵のキャラクターは必見です。

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【56】『君は空を渡り地に響く、おおきなものになりたかった。』

作者 : 北街 さん
プレイ時間 :5~7時間程度

みどころポイント「物語性」
「踏めば死ぬような姿のお前らが、何のために生まれたのだ?」

猫にも劣る脆弱なスライムとして生まれたあなたは、強靭なモンスターとなることを夢見て、生き、死ぬのです。ゆえに魔王はあなたに問いかけるのです。「踏めば死ぬような姿のお前らが、何のために生まれたのだ?」。荒涼にして殺伐のノンフィールドたまごっちRPGです。たとえが旧いかもしれません。
骨子はむしろ育成シミュレーションでありながら、その乾いて過酷な世界観から、1コマンド1コマンドの重みがずっしり感じられる手応え抜群のRPGとなっています。RPGの目的である「強くなること」にこだわり抜いた一本。そしてまた、管理すべきパラメーターやアイテムも膨大であることが、強さとはひとつでないことも告げています。

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【57】『エウレカ・クラン』

作者 : カザ&ソロー さん
プレイ時間 :2~5時間

みどころポイント「画像/音声」
歴代屈指、圧倒的な「プロっぽさ」その2

エントリー【55】『メツァルナ』で同じことを言ったばかりですが、本作『エウレカ・クラン』も商業レベルの作り込みでは勝るとも劣りません。スケールの大きな歴史観を踏まえた冒険の物語ながら、その導入を素早く済ませつつ、快適なチュートリアルでゲームの美味しいところをすばやく遊ばせてもらえます。

ノンフィールド風味に簡略されたダンジョンである一方、ハイテンポな戦闘は手軽ながら奥深い。グラフィックの美麗さもさることながら、なんと立ち絵は目パチ口パクまでやってくれるのです。PCにPS4コントローラーをつなげて遊びたくなる一本です。全体のトーンは夏島のように明るく爽やか、この夏休みにぴったりです。

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【58】『退廃芯所』

作者 : まいなーそふと さん
プレイ時間 :30分~1時間

みどころポイント「熱中度」
ノンフィールドRPGの系譜

第6回第3位『ロードライト・フェイス』、第8回22位『いばらのうみ』などに連なるウディタ製ノンフィールドRPG作品です。マップ移動を簡略化し、そのぶんひとつひとつの戦闘の比重を高めたジャンルであり、プレイヤーは戦闘と戦闘の間でいかにHPや装備と言ったリソースをやりくりするのか考え続けることになります。RPGでありながらSLGな楽しさがあるぶん、ゲームバランスは玄人好みになりますが、本作ではいくぶんカジュアル。よりオーソドックスなRPGに近づいた感触となりますが、自作システムでオーソドックスに寄せるというのはむしろ大変。そこを乗り越えた本作は結果的にはわかりやすく、遊びやすいプレーンな、規範足り得るノンフィールドRPGとなっています。素材の自作率も高い様子で、フリゲならばそれだけで個性がババンと打ち出されるのも魅力ですね。

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【59】『花まるプリンセス』

作者 : とんすけ さん
プレイ時間 :2~5時間

みどころポイント「物語性」
ウディタでアイカツ、大作の感動ストーリー

おにぎり屋の看板娘、梅ちゃんが母親の病をきっかけにアイドルを目指し奮闘するお話で、RPGというよりはADV、ノベルに近いプレイ感です。デフォ戦闘をアレンジしたレッスンやライブの表現はスクショの印象以上の臨場感。ノベル調ではあるものの、キャラ台詞だけであらゆる機微を描くストーリーライティングの力も突き抜けたものがあります。
細かくセーブが入り、テンポよく梅ちゃんはアイドルへの階段を上っていきます。順調一辺倒ではなく、失敗や試練もあり、当初は「家族のための金策」であった「アイドル」を深く理解し、輝きながらはばたいていく梅ちゃんの姿をぜひ見届けてください。

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【60】『Promises of Sacrifice』

作者 : ミナミバショウ さん
プレイ時間 :30~60分

みどころポイント「熱中度」
ダンジョンを踏破せよ、この一言で投げかける

第9回ウディコン19位『±ZERO』のミナミバショウさんですね。その他投稿作も多く、ジャンルを問わずに活躍されておりましたが、今回はマウス&キーボードWASD操作の硬派なアクションRPGです。第一ステージのボスからかなりの強敵。ついてこれるやつだけがついてこい、と言わんばかりの男らしさ。

切り替えられる武器も剣、爪、槍となんともいぶし銀。それはシナリオやマップ美術などでも同様で、必要なだけのシンプルな配置でプレイヤーが想像する余地を広くとった構成。おぼえていますか? といきなり問いかけられては、食らいつかずにはいられません。能動的にゲーム体験を勝ち取っていくデザインの作品です。

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以上、60点。
作者の皆さま、お読みくださった皆さま、お疲れ様でした&ありがとうございました!

4 COMMENTS

ヤパヤパ

どうも、ヤパヤパです。
四角君の岩投げ、エントリー停止しましたー。
ふりーむ!に載せますので、搭載されたら
そちらのリンクにしてもらえませんか?

土日

ヤパヤパ様
ご高覧、コメントありがとうございます。
対応いたしました。

ヤパヤパ

リンクはこれです→https://yahoo.jp/box/w2nOSJ
(ふりーむ!じゃなくてYahoo!ボックスに公開することにしました。)

土日

お知らせいただき、ありがとうございました。
再度記事を修正いたしました。

現在コメントは受け付けておりません。