蒸し暑い夜にはやはりホラーゲームがいいですね。
音響や視覚演出でおどろかせてくれるホラーもいいものですが、遊び終わってからも、ふとした瞬間に思い出してゾワッと来るのは超自然的な存在が本当にいるのかも……と思わせてくれる作品。
そこで今回お話するのが、ウディタ製の傑作ホラー『クトゥルフ神話RPG 血塗られた天女伝説』です。
クトゥルフ神話体系~小説からTRPG、ウディタゲームまで~
クトゥルフ神話というコズミックホラーの物語は、多数のリスペクトやフォロワーによって今も拡大中の一大ジャンルです。ざっくり言えば、人知を超えたおそるべき外宇宙の存在・旧支配者が
現代に蘇らんとして繰り広げられる恐怖体験。コズミックホラーとはその独特のおそろしさのこと。
作家ラヴクラフトが友人らと作り上げた大きな体系であるため、後の作家も自由にこの設定を汲んで活発に創作を行い、拡大しました。最近では人気ソーシャルゲーム『Fate/Grand Order』のシナリオ「異端なるセイレム」でも拾われて話題となりましたし、セイレムのライター星空めておさんは、古いオタクにはビビッと来る名前なのですが……
オホン、話題がそれました。
クトゥルフ神話を題材としたゲームも多数あり、TRPGになったりもしています。その名も『クトゥルフの呼び声』。SAN値(正気度ポイント=Sanity Point)というやつの元ネタもこれですね。
おそろしい出来事に直面し、SAN値を一気に失うと発狂してしまう。そのあたりの無慈悲さをして、「SAN値直送」などと言うのです。
さて、このクトゥルフ神話TRPGを元にしたウディタ作品が、サークルAlchemyBlueさんの「クトゥルフ神話RPG」シリーズです。
AlchemyBlueさんは2015年に『クトゥルフ神話RPG 瘴気の海に眠る少女』、2017年に『クトゥルフ神話RPG 血塗られた天女伝説』をリリース。執筆時点でいずれもDLsiteの販売数が3000超と好評を博しています。現在は3作目となる『クトゥルフ神話RPG 血塗られた天女伝説水晶の呼び声』が開発中。2019年4月下旬にリリース予定とのこと。
2作めで人気声優の杉田智和さんがPVのナレーションを担当され、3作めでは人気ライターのマフィア梶田さんとコラボをしたりと話題性も抜群です。
vtuberさんの実況などでも人気のようで、知っておくとなにかと楽しい作品ですね。
なつかしのファミコンライク&ガチなホラー
かくかくしたフォントによる平仮名とカタカナだけの文字遣いに、ビビッドな色遣い。ファミコン世代直撃に直撃のレトロゲームへのリスペクトです。
ファミコンの名作『スウィートホーム』が下敷きにあるのもさることながら、ダイスを振りながらのキャラクターメイクはTRPGのフレーバー満載であり、ダンジョンRPGの古典『ウィザードリィ』をも思わせます。
ウィザードリィやドラクエ1など、ファミコン初期のRPGは、TRPGの電子化から来ているわけですから、TRPGのシステムとファミコンライクの画面構成は相性抜群なのですね。3DやVRでなくとも、ダイスを振るうち、知らず知らずにゲーム世界へどっぷり没入していきます。
自分が本当にそのゲームの中に居る、と感じさせた時点で、ホラーゲームとしては勝ったも同然。ノイジーなファミコンサウンドがこんなにも背筋を震わせるのかと、きっとおどろくことでしょう。
なんせ、風が吹くだけでこわいんです。
クラシックな導入からの急転直下、迫りくる着物の女の恐怖
前作『瘴気の海に眠る少女』は廃館の肝試しで幕を開けますが、本作『血塗られた天女伝説』は行方不明となった妹の捜索のため、奇妙な伝説の残るひなびた村落へ降り立ち、ゲームがはじまります。
いずれもホラー作品や怪談では伝統の導入。
伝統であるということは王道ということで、王道ということはふつうにやれば間違いなくおもしろい。その上で、前作よりもいっそう周回性と物語性を増した作り込みとなっています。
謎を解くための村の探索には時間制限が設けられ、仲間やスキル構成も限られた状況でどの組み合わせで挑むべきかと攻略に頭を悩ませます。主人公のキャラメイクだけでも、能力値やスキル、職業の組み合わせで選択肢は無数にあるのです。そして「どんな危難に直面しても突破できるぞ」という意気込んだ編成を無情にも粉砕するおそろしさと難しさ。
一周では味わいつくせませんし、二周めでもまだ怖い。
ゲーム的な難しさすら恐怖にすり替えるこの演出力たるや、ただごとではないのです。